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東京地方裁判所 平成5年(行ウ)229号 判決

原告

鈴木友子

(ほか八一名)

右原告ら訴訟代理人弁護士

三宅弘

中島信一郎

井上曉

被告

三鷹市長(Y1) 安田養次郎

安田養次郎(Y2)

右両名訴訟代理人弁護士

松崎勝

被告三鷹市長指定代理人

玉木博

宍戸和夫

武田秀己

長阪修光

花本松夫

大石田久宗

事実及び理由

第三 当裁判所の判断

一  争点1(監査請求前置及び出訴期間遵守の有無)について

1  監査請求前置の有無について

(一)  被告安田は、原告らの同被告に対する損害賠償代位請求のうち、本訴提起後に追加された部分、すなわち、本件建物売買契約及び本件建物売買変更契約に基づき支払われた売買代金並びに本件土地売買契約に基づき平成五年九月三〇日以後に支払われた売買代金等に係る損害賠償代位請求については、監査請求を経ていないので監査請求前置主義に反し不適法である旨主張する。

(二)  しかしながら、被告安田の右主張は採用することができない。その理由は、次のとおりである。

すなわち、住民訴訟について監査請求が前置されているというためには、原則として、監査請求の対象となった違法な財務会計上の行為又は怠る事実と住民訴訟の対象となっている違法な財務会計上の行為又は怠る事実との間に同一性があることが必要である。

本件において、原告らが本件各売買契約には売買代金が不当に高いなど違法・不当な点があるとして、その是正措置を求めて本件監査請求を行ったことは、当事者間に争いがなく、他方、原告らの被告安田に対する損害賠償代位請求は、本訴提起後に追加された部分を含め、同被告が本件各売買契約を締結したことが違法な財務会計上の行為に当たり、本件各売買契約に基づき支払われた売買代金等相当額が右違法な財務会計上の行為と相当因果関係に立つ損害であるとしてその賠償を求めるものであることは、本件記録により明らかである。

したがって、本件監査請求と原告らの被告安田に対する損害賠償代位請求は、いずれも本件各売買契約の締結という同一の財務会計上の行為を対象とするものということができ、原告らの同被告に対する損害賠償代位請求は、本訴提起後に追加された部分を含め、監査請求前置の要件を満たしていることは明らかである。

さらに付言すれば、同一住民が同一の財務会計上の行為又は怠る事実を対象として再度の監査請求をすることは許されないのであるから、本件において、原告らが本訴提起後に追加した損害賠償代位請求を提起する前提として本件各売買契約又はこれに基づく売買代金等の支払について再度の監査請求をすることは許されないというべきである。

なお、被告安田は、原告らの平成八年六月一八日付け訴えの変更申立書により追加された同被告に対する損害賠償代位請求のうち、その請求の原因となっている売買代金等の支払が同申立書が当裁判所に提出された時点より一年以上前にされているものについては、監査請求期間を経過していてそもそも監査請求の対象となり得ないから不適法である旨主張するが、前示のとおり、本訴提起後に追加された同被告に対する損害賠償代位請求は監査請求前置の要件を満たしており、改めて監査請求を経る必要はないのであるから、監査請求期間の経過を問題とする同被告の右主張はその前提を誤っており失当である。

2  出訴期間遵守の有無について

(一)  本件監査請求が平成五年八月五日棄却されたことは、当事者間に争いがなく、原告らに対しそのころ右監査結果の通知があったことは、弁論の全趣旨によりこれを認めることができる。そして、本訴提起以後の訴えの変更等の経過が次のとおりであることは、本件記録により明らかである。

(1) 原告らは、平成五年八月二四日、三鷹市に代位して被告安田に対し、本件土地売買契約に基づき支払われた売買代金等相当額一億二八八一万〇五七四円の損害賠償を求めるとともに、三鷹市長を被告として、本件各売買契約に基づく未払分の売買代金等の支払の差止めを求める本件訴状を当裁判所に提出した。

(2) 原告らは、平成六年一二月一日、三鷹市長を被告として本件建物売買契約及び本件建物売買変更契約に基づく売買代金の支払の差止めを求める訴えを取り下げる趣旨で、本件訴状記載の請求の趣旨を一部変更する旨を記載した同日付け準備書面を当裁判所に提出した上、平成七年一月三〇日の本件第一〇回口頭弁論期日において、右準備書面を陳述した。そして、被告三鷹市長は、同期日において、原告らの右請求の趣旨の一部変更に異議はない旨述べ、右訴えの一部取下げに同意した。

(3) 原告らは、平成八年六月一四日、被告安田に対する損害賠償代位請求の請求の趣旨を拡張し、本件建物売買契約及び本件建物売買変更契約に基づき平成五年一一月一〇日に支払われた売買代金相当額四二億七〇二八万三一一一円並びに本件土地売買契約に基づき同年九月三〇日から平成八年三月二九日までに支払われた売買代金等相当額合計五億〇〇〇三万〇二三二円の損害賠償を追加して求める旨の同年六月一八日付け訴えの変更申立書を当裁判所に提出した。

(4) 原告らは、平成九年五月一六日、被告安田に対する損害賠償代位請求の趣旨を更に拡張し、本件土地売買契約に基づき平成八年九月三〇日及び平成九年三月三一日支払われた売買代金等相当額合計一億六七七四万三二三一円の損害賠償を追加して求める旨の同年五月一九日付け準備書面を当裁判所に提出した。

(二)  右の経過によれば、原告らの当初の訴えが出訴期間を遵守していることは明らかであるが、本訴提起後に追加された被告安田に対する損害賠償代位請求については、その出訴期間の遵守の有無が問題となり得るところ、同被告は、本件建物売買契約及び本件建物売買変更契約に基づく売買代金の支払に係る損害賠償代位請求については、仮に監査請求を経ることを要しないとしても、その出訴期間は原告らが右売買代金の支払があったことを知った日から三〇日以内と解すべきであり、原告らは、遅くとも平成六年一二月一日までに右売買代金が支払われたことを知っていたから、右損害賠償代位請求は、その出訴期間を徒過したものとして不適法である旨主張する。

(三)  そこで、検討するに、前記(一)(3)、(4)の原告らの損害賠償代位請求の趣旨の追加・拡張は、民事訴訟法二三二条の訴えの変更(追加的変更)によるものと解されるところ、一般的に、訴えの変更により追加された新請求については新たな訴えの提起にほかならないから、右訴えについて出訴期間の制限がある場合には、行政事件訴訟法一五条三項のような特別の規定のない限り、右出訴期間の遵守の有無は、変更前後の請求の間に訴訟物の同一性が認められるとき、又は両者の間に存する関係から、追加された新請求に係る訴えを当初の訴えの提起の時に提起されたものと同視し、出訴期間の遵守において欠けるところがないと解すべき特段の事情があるときを除き、民事訴訟法二三五条に従い、右訴えの変更の時を基準としてこれを決すべきものである。

ところで、法二四二条の二第二項によれば、監査委員の監査結果に不服がある場合の住民訴訟の出訴期間は、監査結果の通知があった日から三〇日以内とされているが、前示のとおり、本件において訴えの変更により追加された損害賠償代位請求については、監査請求前置の要件を満たしており、再度の監査請求は不要であるばかりでなく、再度の監査請求が許されないものである。このように再度の監査請求が不要とされ、又は許されない場合の住民訴訟の出訴期間をどのように解すべきかについては、法に明文の規定はなく、それ自体、問題となるところであるが、本件においては、次のとおり、訴えの変更により追加された損害賠償代位請求について、その一部については、訴えの変更前後の請求の間に訴訟物の同一性が認められ、その余の部分については、訴えの変更前後の請求の間に存する関係から、追加された新請求に係る訴えを当初の訴えの提起の時に提起されたものと同視し、出訴期間の遵守において欠けるところがないと解すべき特段の事情があると認められるので、出訴期間はいずれも遵守されているものと解することができる。

すなわち、訴えの変更により追加された損害賠償代位請求のうち、本件土地売買契約に基づく売買代金等の支払に係る部分については、当初の訴えで請求していた右契約に基づく売買代金等の支払に係る損害賠償代位請求について、本訴提起後に右契約に基づき売買代金等が支払われたことにより損害が拡大したものとして、請求の趣旨を拡張するものにすぎず、訴えの変更前後の請求の訴訟物は同一のものということができる。

他方、訴えの変更により追加された損害賠償代位請求のうち、被告安田が出訴期間の徒過を主張している部分である、本件建物売買契約及び本件建物売買変更契約に基づく売買代金の支払に係る損害賠償代位請求については、右各契約と本件土地売買契約とは、契約としては別個のものであり、契約の相手方当事者も異なっているので、右損害賠償代位請求と当初の訴えで求めていた本件土地売買契約に基づく売買代金等の支払に係る損害賠償代位請求とは、訴訟物を異にするものというべきである。しかし、本件土地建物は、いずれも、もと白石建設の所有であり、後記二1(本件各売買契約の締結の経緯について)記載のとおり、三鷹市は、本件土地建物一括でなければ買収に応じないとしていた白石建設の意向を受けて買収交渉を行い、その結果として本件各売買契約が締結されたもので、右各契約は、もともと密接な関係があること、原告らは、当初の訴えにおいて、本件建物売買契約及び本件建物売買変更契約の違法性を主張して右各契約に基づく売買代金の支払の差止めを求めており、右売買代金が支払われたことに伴いその支払の差止めを求める訴えを取り下げた後も、本件訴訟において一貫して、右各契約の違法性を主張してきたこと(右事実は、本件記録により明らかである。)、被告安田は、訴えの変更の前後を通じて被告であることに変わりはなく、本件建物売買契約及び本件建物売買変更契約に基づく売買代金の支払に係る損害賠償代位請求が追加されることによって、同被告の防御活動に支障が生じるものではないことなどを考えれば、訴えの変更により追加された右損害賠償代位請求については、これを当初の訴えの提起の時に提起されたものと同規し、出訴期間の遵守において欠けるところがないと解するのが相当である。

(四)  以上のとおり、訴えの変更により追加された被告安田に対する損害賠償代位請求は、いずれも出訴期間を遵守しているものというべきであり、同被告の前記主張は採用することができない。

二  争点2(本件各売買契約の違法・無効事由の存否)について

1  本件各売買契約締結の経緯について

前記第二の一の争いのない事実と〔証拠略〕によれば、次の各事実を認めることができる。

(一)  三鷹市は、昭和四六年に地域社会の再構築の観点からコミュニティ行政を提唱し、その後、市内を七つのコミュニティ住区に分かち、各コミュニティ住区にコミュニティ醸成の場としてコミュニティ・センターを設置する施策を進め、昭和五九年までに、七つのコミュニティ住区のうち六つのコミュニティ住区にコミュニティ・センターを設置した。しかし、三鷹駅周辺地域である駅前周辺住区においては、この地域が商店、住宅の密集する地域であるため建設用地の取得が難航し、地権者との協同ビル開発方式、既存の民間ビル買取方式など種々の方式でコミュニティ・センターの設置に向けて努力してきたが、いずれも成果が得られず、コミュニティ・センターが未設置のままで、その設置が重要な課題となっていた。

(二)そのような中で、三鷹市では、平成二年に白石建設が本社ビルを建設するため三鷹駅に近い場所で用地買収を進めているという情報を入手したため、同社に対し、右買収を進めている本件土地又は新しい本社ビルに移転した後空き家となる現在の本社ビルを同市へ売却してほしい旨中し入れたが、同社からこれをいずれも拒否された。

その後、平成三年の夏以降、三鷹市において、再度、白石建設に対し、本件土地の売却方を懇請したところ、同社から、本件土地だけでは売却に応じられないが、本社ビルとして計画中の本件建物と一括であれば売却に応じてもよいという回答を得た。なお、白石建設は、本件土地建物の売却代金について、当初、一〇〇億円以上を希望していたが、同年の秋ころには、八〇億円であれば売却に応じるとの考えを示すに至った。

(三)  三鷹市では、本件土地のみを取得し、その後に住民の意向を取り入れた上でコミュニティ・センターを建設することを希望していたが、市長の職にあった被告安田を含め同市内部で検討した結果、現状において、駅前周辺住区にコミュニティ・センターを設置するためには、本件土地建物を一括して取得する以外に方法はないとの結論に達し、また、本件土地建物を購入すれば、従来から住民がその設置を要望していた駅前図書館や公共駐車場を併設することも可能になるとの考慮のもと、本件土地建物を一括して購入するとの意思決定を行い、平成三年一一月一五日付けで、市長名で白石建設に対し本件土地建物の譲渡方を求める文書を発出した。白石建設は、これを受けて、平成四年二月三日、本件土地建物を八〇億円で売り渡すことを承諾する旨の「売渡し承諾書」と題する文書を三鷹市長あてに差し入れた。なお、白石建設は、これに先立ち平成三年一〇月一一日に本件建物について建築確認の申請を行い、同年一二月一〇日にその建築確認を得、その後、建築工事に着手していた。

三鷹市は、本件土地建物を購入できる見通しが立ったことから、平成四年度の予算編成に当たり、本件土地購入費として平成四年度の公社会計に三八億円を計上し、本件建物については平成五年度までの債務負担行為により取得するものとして購入費四三億円を計上して、本件土地建物購入のため必要な予算措置をとった。

(四)  その後、三鷹市は、公社に対し、本件土地の先行取得を依頼し、公社では、株式会社日本鑑定及び不動産鑑定士宮内裕(以下「宮内鑑定士」という。)に本件土地全体の平成四年四月一日現在の価格(正常価格)の鑑定を依頼したところ、前者の鑑定では三四億五四七七万円(一平方メートル当たり三四八万円)、後者の鑑定では三四億九四四八万円(一平方メートル当たり三五二万円)との鑑定結果が得られた。

また、三鷹市では、大誠建築設計事務所及び市来崎建築事務所に当初の本件建物全体の設計予算の積算を依頼したところ、前者の積算では三五億四〇〇〇万円(うち諸経費四億一四〇〇万円)、後者の積算では三五億二〇〇〇万円(うち諸経費四億〇九〇〇万円)との積算結果が得られた。

(五)  三鷹市は、右の積算結果を踏まえた上で、白石建設と本件建物の価格の交渉を行った。白石建設からは、本件建物の価格を諸経費込みで約三五億円でどうかという話が出たが、三鷹市は、同社の本社ビルとして使用することを前提に設計されていた本件建物の設備・仕様のうち、コミュニティ・センター等の公共施設にとって不要であるもの、あるいは、その施設の内容等について後日住民の意向を取り入れて決定する必要のあるものについて当初の工事内容から除くことを求め、さらに、前記の積算結果は民間工事単価ベースのものであり、公共建築物の場合には民間工事単価よりも減額されるべきであることを主張して本件建物の価格の減額を求め、他方、本件建物を公共建築物に転用するため、東京都の構造設計指針に従い水平震度指数を〇・二五として、そのための強化工事費分(工事費一億円、これに係る諸経費一〇〇〇万円)を加算することとして、同社との間で、本件建物全体の価格を三八億五二四五万円(内訳・建築工事費三一億円、設計監理費一億四五七〇万円、工事中金利一億九三七五万円、近隣対策費九三〇〇万円、地質調査費一〇〇〇万円、諸経費三億一〇〇〇万円)とし、これに消費税一億一五五七万三五〇〇円を加算した三九億六八〇二万三五〇〇円に三鷹市が本件建物全体のうち区分所有により取得する部分の割合である一万分の九八五五を乗じた三九億一〇四八万七一五七円(うち消費税一億一三八九万七六八四円)をその購入価格とすることを合意した。そして、平成四年五月二二日付けで、両者の間で、三鷹市議会で契約議案が可決された後本件建物の売買契約を締結する旨の仮契約が行われた。

また、公社においても、前記鑑定結果を踏まえ、白石建設との間で本件土地の価格交渉を行い、本件土地については、前記鑑定結果のうち低額の三四億五四七七万円に公社の取得する共有持分の割合である一万分の九八五五を乗じた三四億〇四六七万五八三五円をその購入価格とすることを合意し、同日付けで、両者の間で、本件建物の契約議案が三鷹市議会で可決されることを停止条件として本件土地の売買契約を締結する旨の合意書が作成された。

(六)  三鷹市においては、法九六条一項五号、八号の規定を受けて制定された「議会の議決に付すべき契約及び財産の取得又は処分に関する条例」三条により、予定価格二〇〇〇万円以上の不動産(ただし、土地については、一件五〇〇〇平方メートル以上のものに限る。)の買入れについては、議会の議決に付することになっているため、被告安田は、平成四年六月八日、三鷹市議会に対し、駅前周辺住区コミュニティ・センター本館(仮称)、駅前図書館(仮称)、公共用駐車場(仮称)等に使用する目的で白石建設から本件建物を三九億一〇四八万七一五九円で買い入れることについての議案を提出した。そして、右議案は総務委員会に付託されて審査が行われた上、同月二五日、三鷹市議会本会議において賛成多数で原案どおり可決された。また、本件土地の購入については、議会の議決を要しないが、その購入価格について、三鷹市の公共用地の取得等に係る価格等について適正な評定を行うため同市に設置されている公共用地価格等審査委員会の評定に付され、同月二九日、同委員会において本件土地の評定額が三四億〇四六七万五八三五円と決せられた。

(七)  右議会の議決を受け、平成四年七月一日、三鷹市と白石建設との間で代金額を三九億一〇四八万七一五九円(うち消費税一億一三八九万七六八四円)とする本件建物売買契約が締結された。本件土地についても、同日、公社と白石建設との間で、公社が代金三四億〇四六七万五八三五円で本件土地を買い受ける旨の売買契約が締結され、さらに、公社と三鷹市との間で、右代金額に公社の諸経費相当額一億二一〇四万〇四五九円を上乗せた三五億二五七一万六二九四円を代金額として本件土地売買契約が締結された。

(八)  三鷹市では、その後、本件建物をコミュニティ・センターとして使用するため施設内容等をどのようなものにするかについて、駅前周辺住区の住民の参加を得て検討した上、その施設内容等を決定し、平成四年一〇月ころ、白石建設に対し、本件建物の設計・仕様の変更を指示した。そして、白石建設から右設計・仕様の変更に伴う本件建物の代金の追加額を諸経費込みで四億二九五四万九一五〇円(うち消費税一二五一万一一四〇円)とする見積書が提出された。三鷹市では、当初の本件建物全体について設計予算の積算を依頼した大誠建築設計事務所及び市来崎建築事務所に右設計・仕様の変更に伴う変更工事の設計予算の積算を依頼したところ、前者の積算では諸経費込みで三億六七三四万四三八四円、後者の積算では諸経費込みで三億七二八五万三六八四円の積算結果(いずれも消費税を含まない金額)が得られたため、これを踏まえ、また、前回と同様に、公共建築物であるので民間工事単価よりも減額されるべきであることを主張して、白石建設に対し、価格の減額を求めた結果、同社との間で、設計・仕様の変更に伴う代金の追加額を三億五九七九万五九五二円(内訳・建築工事費二億八二七五万六〇五四円、諸経費二八二七万五六〇五円、設計変更料二五八八万三〇〇〇円、図書館レイアウト料四九五万円、工事中金利七四五万一八〇〇円、消費税一〇四七万九四九三円)とし、これと本件建物売買契約の代金額を合算した四二億七〇二八万三一一一円(うち消費税一億二四三七万七一七七円)を本件建物の最終的な代金額とすることを合意した。

(九)  被告安田は、平成四年一二月二日、本件建物の設計、仕様の変更に伴い本件建物の買入れ価格を四二億七〇二八万三一一一円に増額することについて三鷹市議会の議決を得るため、議案を同市議会に提出し、右議案は、総務委員会に付託されて審査が行われた上、同月二二日、同市議会本会議において賛成多数で原案どおり可決され、これを受けて、三鷹市と白石建設との間で本件建物売買変更契約が締結された。

2  原告らの主張(1)について

(一)  原告らは、本件建物は、本件建物売買契約締結時には不動産として存在していなかったから、その買入れは、随意契約が例外的に許される場合を規定した地方自治法施行令一六七条の二第一項二号にいう「不動産の買入れ」に該当せず、本件建物売買契約は、契約の締結方法を制限した法令の規定に違反し、右契約の相手方である白石建設は、右事実を知悉していたから、右契約は無効である旨主張する。

(二)  しかしながら、法二三四条二項の規定を受けて随意契約によることができる場合を規定した同法施行令一六七条の二第一項二号は、その性質又は目的が競争入札に適しない契約をする場合には、随意契約によることができる旨を規定しているのであり、建築予定の建物又は建築中の建物でいまだ不動産といえる状態に達していないものを買い入れる場合であっても先その性質又は目的が競争入札に適しないものであるときには、競争入札によらずに随意契約によることができることは明らかというべきである。

本件においては、前記認定のとおり、白石建設は、本件土地のみの買収には応じず、建築を計画中の本件建物との一括売却でなければその買収に応じないとしていたのであるから、三鷹市において、本件土地のみを取得した上で、競争入札の方法によって請負契約を締結して建物を取得するという通常の方法をとる余地はなかったものである。前記認定のとおり、三鷹市としては、駅前周辺住区において、これまで種々の方式でコミュニティ・センターの設置に向けて努力してきたがいずれも成果が得られず、コミュニティ・センターの設置が重要な課題となっていた中で、市長の職にあった被告安田を含め同市内部で検討した結果、現状において、駅前周辺住区にコミュニティ・センターを設置するためには、本件土地建物を一括して取得する以外に方法はないとの結論に達し、また、本件土地建物を購入すれば、従来から住民がその設置を要望していた駅前図書館や公共駐車場を併設することも可能になるとの考慮のもと、本件土地建物を一括して購入することを決定したものであり、その決定自体は、当時重要な課題となっていた駅前周辺住区のコミュニティ・センターをどのような方法で設置するかということにかかわる市長の裁量の範囲内で行われたもので、何ら違法性を有するものではない(なお、本件土地建物の取得価格の点については後述する。)。そして、本件土地建物を一括して購入するという決定を行った以上、本件建物の売買契約を随意契約の方法によって締結することは、その性質上当然のことというべきである。

(三)  原告らは、被告安田と白石建設とが同社に一定の利益を与える目的で、本件土地建物の総体としての価格をあらかじめ合意し、その価格による本件建物の取得を実現するために随意契約の方法によって本件建物売員契約を締結した旨主張し、右合意があったことは、三鷹市が白石建設に対し本件土地建物の譲渡の申入れを行うことを決した同市内部の起案書(〔証拠略〕)に「購入経費概算八〇億円(土地・建物とも)」という記載があり、他方、白石建設が三鷹市長あてに差し入れた「売渡し承諾書」と題する文書(〔証拠略〕)に「売渡し価格総額金八〇億円」という記載があることなどから明らかであると主張する。

しかしながら、〔証拠略〕によれば、三鷹市の右起案書に記載された購入経費の概算は、あくまで白石建設の希望金額に基づき記載したもので、同市として右金額で本件土地建物を購入することを決定していたわけではないこと、また、白石建設の右売渡し承諾書に記載された売渡し価格は、同社の希望価格を記載したもので、同社としても三鷹市との間で本件土地建物の価格を八〇億円とすることで合意ができたとの認識は有していなかったことが認められるから、右起案書及び売渡し承諾書の存在をもって、三鷹市と白石建設との間であらかじめ本件土地建物の価格を八〇億円とする合意があったということはできず、他に右合意の存在を認めるに足りる証拠はない。

したがって、右合意の存在を前提とする原告らの前記主張は採用することができない。

(四)  以上のとおり、本件建物売買契約を随意契約の方法によって締結したこと自体は、普通地方公共団体の契約締結方法を制限した法二三四条二項、同法施行令一六七条の二第一項に違反するものということはできないから、原告らの主張(1)は採用することができない。

3  原告らの主張(2)について

(一)  原告らは、本件建物売買契約及び本件建物売買変更契約の締結を承認した三鷹市議会の議決は、被告安田と白石建設との間で同社に一定の利益を与える目的であらかじめ合意された本件土地建物の総体としての価格に基づく代金額を承認させるために、市の担当者において、変更工事に関する二重見積り、諸経費の二重計上等が議会で明らかにならないようにし、右代金額が適正であるかのような虚偽の説明を行った結果によるものであり、その議決に重大かつ明白な瑕疵があるから、本件建物売買契約及び本件建物売買変更契約は無効である旨主張する。

(二)  しかしながら、被告安田と白石建設との間で同社に一定の利益を与える目的で本件土地建物の価格があらかじめ合意されていたことを認めるに足りる証拠が存しないことは前示のとおりであり、本件建物売買契約及び本件建物売買変更契約の締結について三鷹市議会の議決を経る際に被告安田又は同市職員がことさら虚偽の説明を行ったことを認めるに足りる証拠はない。

(三)  原告らの主張する二重見積りの点については、前記認定のとおり、三鷹市は、白石建設が本社ビルとして使用する予定の当初の本件建物全体について、建築事務所二社に設計予算の積算を依頼し、その積算結果を踏まえた上で、その設備・仕様のうち、コミュニティ・センター等の公共施設にとって不要であるもの、あるいは、その施設の内容等について後日住民の意向を取り入れて決定する必要のあるものについて当初の工事内容から除くこととして、白石建設と本件建物の価格について交渉し合意に至っているのであるから、本件建物をコミュニティ・センター等に使用するための設計・仕様の変更に伴う変更工事に係る見積書又は設計予算書に当初の本件建物全体についての設計予算書と重複する工事内容が記載されているからといって、変更工事について二重見積りがされているということにはならないというべきである。

原告らの主張する諸経費の二重計上の点については、前記認定の本件建物売買契約の代金額決定の経緯に照らせば、右代金額を決定する際に諸経費を二重に計上しているわけではないことは明らかというべきであるが、〔証拠略〕によれば、平成四年六月一七日に開催された三鷹市議会総務委員会において、当時同市の市民部長であった持田明が原告らが前記第二の三2(一)(2)において指摘するような説明を行っていることが認められ、その説明には、建築事務所二社の設計予算の積算額に諸経費が含まれていることを明らかにしていない点など、説明として不十分、不適切な点があることは否定できないが、同人が同議会の議員を欺罔する目的でことさら虚偽の説明を行ったと認めることはできない。

(四)  その他三鷹市議会の議決に本件建物売買契約及び本件建物売買変更契約を違法・無効とするような瑕疵があることを認めるべき証拠は存在せず、原告らの主張(2)は採用することができない。

4  原告らの主張(3)について

(一)  原告らは、本件建物売買契約及び本件建物売買変更契約によって最終的に決定された本件建物の価格は、その適正な価格をはるかに超えるものであるから、右各契約は、契約締結についての市長の裁量の範囲を逸脱して締結されたもので違法である旨主張する。

(二)  一般的に、普通地方公共団体が行政上の必要から特定の不動産(本件のような建築途中にある未完成建物を含む。)を随意契約により買い入れる場合には、当該普通地方公共団体の長は、適正な予算の執行という点に留意しつつ、合理的な範囲で裁量権を行使してその取得価格を決定する権限を有しているというべきである。もとより、普通地方公共団体の長としては、所与の条件のもとで、当該普通地方公共団体にできるだけ有利な価格で目的不動産を買い入れるよう努力すべき義務があることは当然であるが、不動産については、その客観的な価格がいくらであるかを的確に把握することが容易ではないという面がある上、契約は価格について相手方との合意ができてはじめて成立するものであるから、現実の問題として、常に当該普通地方公共団体にとって最も有利な価格、すなわち、契約の相手方にとって最も不利な価格で契約を締結することができるとは限らないのである。相手方の意向、交渉態度によっては、通常の取引価額と考えられる価格による買入れが困難であるが、しかしなお行政上の必要から当該不動産を取得する必要があるという場合に、行政上の必要性等に関する政策的な判断から、右価格を超えて当該不動産を買い入れることを一概に違法視することは相当でないというべきである。

(三)  本件においては、前記認定のとおり、本件建物売買契約及び本件建物売買変更契約の代金額は、白石建設が本社ビルとして使用する予定の当初の本件建物全体及び本件建物をコミュニティ・センター等として使用するための設計・仕様の変更に伴う変更工事について、それぞれ建築事務所二社に設計予算の積算を依頼し、その積算結果を踏まえて白石建設との間で価格の減額交渉を行った結果決定されたものであり、最終的に決定された代金額をみても、その金額が適正価格をはるかに超え、取得価格の決定についての市長の裁量の範囲を逸脱し、契約締結行為を違法と評価すべき程度に達していると認めることはできない。

すなわち、本件建物売買契約の代金額についてみれば、前記認定のとおり、大誠建築設計事務所及び市来崎建築事務所による当初の本件建物全体の建築工事の設計予算の積算結果は、前者によるものが三五億四〇〇〇万円(うち諸経費四億一四〇〇万円)、後者によるものが三五億二〇〇〇万円(うち諸経費四億〇九〇〇万円)であり、他方、本件建物売買契約において代金額を決定するに当たり前提とされた本件建物全体の建築工事費及び諸経費の合計は三四億一〇〇〇万円(うち諸経費三億一〇〇〇万円)である。本件建物売買契約を締結するに当たっては、当初の本件建物の設備・仕様のうち、コミュニティ・センター等の公共施設にとって不要であるもの、あるいは、その施設の内容等について後日住民の意向を取り入れて決定する必要のあるものについては当初の工事内容から除かれており、また、本件建物を公共施設に転用するための強化工事費分が加算されているため、両者の金額を単純に比較することはできず、また、当初の本件建物の工事内容から除かれている部分及びその部分の見積額についての詳細、民間工事単価べースによる設計予算の積算額について公共施設に変わることに伴う単価の見直しによる減額がどの程度されたかが不明であるなど建築工事金額決定の過程に曖昧な点があるという憾みがあるが、前記認定のとおり、白石建設が本件建物の価格を諸経費込みで約三五億円とすることを提示し、これに対し三鷹市は価格についてある程度の妥協をしてでも本件土地建物を取得する行政上の必要があったことを考慮し、前記建築事務所二社の積算結果と対比してみれば、本件建物売買契約において代金額を決定するに当たり前提とされた右建築工事費及び諸経費の金額は、市長の裁量によって決定することのできる範囲内のものということができる。本件建物売買契約において代金額を決定するに当たっては、右建築工事費及び諸経費に加えて、設計管理費一億四五七〇万円、工事中金利一億九三七五万円、近隣対策費九三〇〇万円、地質調査費一〇〇〇万円が加算されているが、証人白石良智の証言によれば、これらの費用は白石建設の強い要求により同社が実際に負担した実費を補てんする趣旨で加算されたものであることが認められるのであって、前記認定のような行政上の必要性から三鷹市が右費用の加算に応じたことを不当ということはできない。

次に、本件建物売買変更契約によって増額された代金額についてみれば、その増加額は消費税分を除くと三億四九三一万六四五九円になるところ、右金額は、設計・仕様の変更に伴う変更工事について大誠建築設計事務所及び市来崎建築事務所が行った設計予算の積算結果である三億六七三四万四三八四円及び三億七二八五万三六八四円を下回るものであり、これを不当とする理由は見いだせない。

(四)  原告らは、白石建設から本件建物の建設を請け負った三井建設の請負代金が二四億四五〇〇万円であることをもって、本件建物売買契約及び本件建物売買変更契約によって決定された代金額が不当に高額である旨主張する。

しかしながら、〔証拠略〕によれば、白石建設は、同社の本社ビルとして本件建物全体を建築する計画を立てた際、設計を依頼した設計事務所から建築工事費について約三五億円という設計予算の積算結果を得ていたため、平成三年一二月、三井建設と白石建設で工事負担割合を七対三として共同施工するという条件で、三井建設に対し請負代金二四億四五〇〇万円で本件建物の建築工事を発注したこと、白石建設の担当工事内容は、仮設工事等の事前工事、内装工事、外構工事等であったこと、白石建設は、右工事のほか近隣対策等のため実際に費用を支出していることが認められ、右認定事実によれば、白石建設の三井建設に対する発注金額との比較をもって直ちに本件建物売買契約及び本件建物売買変更契約の代金額が不当であるということはできない。

(五)  原告ら主張の変更工事に関する二重見積り、諸経費の二重計上が認められないことは、前示のとおりである。

原告らは、当初の本件建物の設計予算書における鉄筋コンクリート用の鉄筋及びコンクリート量は、本件建物売買契約書添付図面に基づいて積算される通常の鉄筋及びコンクリートの量の一・一五倍の量となっていて水増しが行われており、これを前提にして設計予算の積算が行われている旨主張し、これを裏付けるものとして〔証拠略〕を提出するが、何をもって通常必要な鉄筋及びコンクリート量というのかが必ずしも明らかでないうえ、右鑑定意見書は、右図面のうち種々不明な点があるのに、これを考慮しないで鉄筋及びコンクリート量を積算しており、それ自体正確性を欠くものである。しかも、本件建物が通常の鉄筋及びコンクリート量しか使用しない建物かどうかを明らかにする証拠はないのであって、いずれにしても原告らの右主張は採用することができない。

(六)  以上のとおり、本件建物売買契約及び本件建物売買変更契約が契約締結についての市長の裁量の範囲を逸脱して締結されたものということはできないから、原告らの主張(3)は採用することができない。

5  原告らの主張(4)について

(一)  原告らは、本件土地売買契約が本件建物売買契約と一体のものとして締結されており、原告らの主張(1)、(2)により本件建物売買契約が無効であることは、本件土地売買契約の無効をもたらすと主張する。

(二)  しかしながら、原告らの主張(1)、(2)を採用することができないことは、前示のとおりであるから、本件土地売買契約の無効をいう原告らの主張(4)は、その前提を欠き失当というべきである。

6  原告らの主張(5)について

(一)  原告らは、本件土地売買契約によって最終的に決定された本件土地の価格は、その適正な価格をはるかに超えるものであるから、右契約は、契約締結についての市長の裁量の範囲を逸脱して締結されたもので違法である旨主張する。

(二)  しかしながら、普通地方公共団体が行政上の必要から特定の不動産を随意契約により買い入れる場合に、契約締結権限を有している当該普通地方公共団体の長がその取得価格の決定について一定の範囲内で裁量を有していることは、前示のとおりであり、本件においては、前記認定のとおり、三鷹市から本件土地の先行取得の依頼を受けた公社が日本鑑定及び宮内鑑定士に本件土地全体の鑑定を依頼したところ、前者の鑑定では三四億五四七七万円(一平方メートル当たり三四八万円)、後者の鑑定では三四億九四四八万円(一平方メートル当たり三五二万円)との鑑定結果が得られたため、公社において、これを踏まえ白石建設と価格の交渉を行い、最終的に、前記鑑定結果のうち低額の三四億五四七七万円に同市の取得する共有持分の割合である一万分の九八五五を乗じた三四億〇四六七万五八三五円をもってその購入価格とすることを合意し、三鷹市は、右公社の購入価格に公社の諸経費を加算した金額をもって本件土地売買契約の代金額としたものであり、その代金額が適正価格をはるかに超え、取得価格の決定についての市長の裁量の範囲を逸脱したものということはできない。

(三)  原告らは、日本鑑定及び宮内鑑定士の鑑定結果は、時点修正率及び容積率減価の評価を怠ったもので適正な価格を明らかにしていない旨主張する。

そこで、右の点について検討するに、〔証拠略〕によれば、日本鑑定及び宮内鑑定士は、公社から、平成四年四月一日現在の本件土地全体の価格(正常価格)の鑑定を依頼され、日本鑑定は同月一〇日に、宮内鑑定士は同月五日にそれぞれ鑑定評価を行い、いずれも取引事例比較法及び収益還元法(土地残余法)を用い、東京都基準地価格との均衡にも配慮して、前示のとおりの鑑定結果を出していること、このうち公社が本件土地の購入代金を決定するに当たって前提とした日本鑑定の鑑定方法は、本件土地を中高層店舗・事務所付き集合住宅の敷地として利用することを前提に、本件土地の近隣地域に幅員九メートルの市道に面する間口一五メートル、奥行二〇メートル、地積三〇〇平方メートルの長方形の標準的画地を設定し、四つの取引事例を採用して取引事例比較法により標準的画地の比準価格を一平方メートル当たり三五五万円と求め、また、収益還元法(土地残余法)により標準的画地の収益価格を一平方メートル当たり二〇一万円と求め、さらに東京都基準地価格を規準とした標準的画地の規準価格を一平方メートル当たり二九九万円と求めた上、右の三つの試算価格を比較検討した結果、比準価格を採用し、標準的画地の価格を一平方メートル当たり三五五万円と求め、これに画地条件等による本件土地の個別的要因による格差率一〇〇分の九八を乗じて本件土地の一平方メートル当たりの単価を三四八万円と求め、これに本件土地の面積九九二・七五平方メートルを乗じて本件土地全体の価格を三四億五四七七万円と求めたものであること、日本鑑定は、右の鑑定評価の過程において、取引事例から比準価格を求める際、及び東京都基準地価格から規準価格を求める際には、地価公示価格、東京都基準地価格、三鷹市内の土地取引の動向等を比較検討の上作成した時点修正率表に従い九五・七パーセント又は九六・六パーセントの時点修正率を用いて時点修正を行い、また、本件土地の個別的要因による標準的画地との格差率を求める際には、画地条件について、本件土地がほぼ台形であることからマイナス一パーセント本件土地が南西の角地であることからプラス五パーセント、行政的条件について、本件土地が商業地域(容積率五〇〇パーセント)。住居地域(同二〇〇パーセント)、第一種住居専用地域(同一〇〇パーセント)にまたがり、実効容積率が四四〇パーセントであることからマイナス六パーセントの格差率を認め、右各格差率を相乗して、全体としての格差率を一〇〇分の九八としていることが認められる。

原告らは、日本鑑定及び宮内鑑定士の鑑定が時点修正率及び容積率減価の評価を怠っているというが、公社が本件土地の購入代金を決定するに当たって前提とした日本鑑定の鑑定方法についてみてみれば、右認定のとおり時点修正及び容積率の減価の点についても考慮した上で鑑定結果を出していることは明らかである。原告らは、原告らの依頼した他の不動産鑑定士の意見に基づき、日本鑑定及び宮内鑑定士の鑑定結果を批判するが、時点修正率などについて右各鑑定と異なる意見があり得るとしても、右各鑑定について、三鷹市がその鑑定結果に依拠して本件土地の取得価格を決定したことを違法と評価すべき程度の著しい不当性があるとは認められない。

(四)  したがって、本件土地売買契約が契約締結についての市長の裁量の範囲を逸脱して締結されたものということはできないから、原告らの主張(5)は採用することができない。

第四 結論

以上のとおり、本件各売買契約に違法・無効事由が存在するという原告らの主張はいずれも採用することができず、したがって、本件各売買契約を締結したことが違法な財務会計上の行為であるとして被告安田に対し損害賠償を求める原告らの損害賠償代位請求及び本件土地売買契約が無効であることを前提に被告三鷹市長に対しその売買代金の支払の差止めを求める原告らの差止請求は、いずれも理由がないというべきである。

よって、原告らの請求をいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担について、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九三条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 青栁馨 裁判官 増田稔 篠田賢治)

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